隔日おおはしゃぎ (Road of座)

Road of座(ロードオブザ)の代表大橋拓真が、ほぼ隔日でコラムを書くところ

こいバナはるき♯3 帰り道のバナ

ちょっと昔に考えてたこと。
飲み会の帰り道が好きなんです。結構もう自転車には乗らない方がいいくらいに酔った後の帰り道が。お店の前まではすごい盛り上がってて、火照った体に流れる風が気持ちよくて、夜の街の明かりがぼやーって見えるんです。



さっきまで同じ方向の人と帰ってたはずなんだけど、あれは先輩だったか、後輩だったか、はたまた最初から一人で帰ってたのか、全然思い出せなくなって、でも思い出そうともならなくて。ただこんな気分のいい夜を独り占めにできるなんて、僕は贅沢物だなぁとしみじみと感じる。

このマンションはあいつの家。どの窓があいつの部屋かは分からない。ただ虫食いみたいにまばらに、ぼやっとしたカーテン越しの明かりがついてる、箱。でもあの明かり一個一個に誰かの生活があって歴史があって未来があるんだなって感じるところで、いまあいつは帰省してたんだったと思いつく。

そんなこと言うと誰かの生活なんていくらでもある。ここのアスファルトのガムも誰かの生活の結果だし、ここに自転車が止まってるのは誰かの生活の結果だし、嫌になるほど生活であふれてる。そしてこの道は僕の帰り道だ。

高校の時の帰り道を思い出す。部活で疲れた体と満員電車。汗と微睡みの時間。あの時は隣の人のことなんて考えたこともなかったな。ただただ人で溢れかえっていて、今思うと感覚がマヒしてたのかな、でもあの電車の中ではそれが常識だったから、何の疑いもなく電車につまってたから。

この帰り道は全然違う。汗もないし人もいない。でも変わらない帰り道なんだ。この夜の匂いだったり肌触り、流れる風と漏れ出る灯り。あぁ、僕は帰ってるんだ。今日一日を終えて帰ってるんだ。壁と天井と布団しかないような家だけど、帰ってるんだ。あそこは僕の家なんだ。僕の家はもう実家じゃなくて、あの部屋になってしまったんだ。帰ろう。もう帰ろう。だってもう眠気と吐き気が限界だから。

ちょっとだけ家路を急ぎながら、僕の生活もこの街の一部になってくんだな、なんて思ってリ。