隔日おおはしゃぎ (Road of座)

Road of座(ロードオブザ)の代表大橋拓真が、ほぼ隔日でコラムを書くところ

♯48 11月のタンゴ

・「今年もSeptemberを9月に聞き忘れた」と思う11月

・一月が31日じゃない月の覚え方の「西向く侍」の侍がピンと来ない11月


そんな11月がついに始まりました。僕はというと風邪をひいて一日中部屋に引きこもっております。全くもって不毛。充実させるべき時間を充実させず消化させてゆく感覚というのは「やっちまった奴」にのみ与えられる特殊な経験であり、とてもつらい。「この経験は人生順風満帆な奴には一生わからんだろうねアハハ」もよし、「何もしないということは何もしないなりの独特の歪みを得ることができる」もよし、「何かをしてるように見えるやつは正直言って何かをしてるように見えているだけ」もよしである。「どいつもこいつもどんどん何かをして前に進んでおり、よりによってあんな歯牙にもかけなかった無能が遥か先にいる現状、俺は何て仕方ない人間だ」これはやめておいた方がいい。虎になる。

・「今年もSeptemberを聞き忘れた」と思うのは11月だが、そう思える期間は10~12月だけである。つまり、錯覚。

・「11」はよく見ると確かに西向いてる寂しげな男に見えないこともない


「太平洋を真ん中に置いて横長に「3」を書くと面積の広い順になる」これを教えてくれたのは中学の社会科の先生だった。いい先生だった。「グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国」を答えた僕に拍手を送ってくれた彼。放課後体育館の演壇の上で踊りまくっていたときにちょうどやって来てしこたま怒鳴ってきた彼。語尾に「ネ」をつけまくることから誰かに授業中の「ネ」の回数を数えられていた彼。先輩が体育館でぶっぱなした消火器の粉を「蹴っ飛ばしたら出てきた」という謎の言い訳で納得して一緒に掃除してくれた彼。部活中に裏に流れる川をひたすらたどっていたら戻れ!と言いながら自転車で追いかけてきた彼。いい先生だった。

それにひきかえ、高校二年の時の担任! 是が非でも授業中のネックウォーマーを許さぬ論陣。「ほんまに留年させんぞ」必殺の殺し文句。ボケーっとしてたら「授業中ボケーっとするな」という過激派。「さしすせそ」が「シャシィシュシェシォ」になるお茶目さ。「麻薬ダメ絶対」の講演で友達に麻薬を勧める役をしていたヘビースモーカー。「実家通い」とおちょくってたのにこないだついに結婚した幸せ者。でも提出物を休日に万博まで持ってこいというのは暴挙。持っていかなかったけど。


11月は早くも一年の終わりを感じさせる。みんなその一年を振り返る。1月の出来事が今年の出来事と思えないと吃驚するのも11月の醍醐味。醍醐味ばかりの人生。醍醐味ばかりの人人。後醍醐天皇による醍醐天皇へのとばっちり感。初めて「醍醐味」という言葉を使用したときの感慨。11月はワインレッドの趣。ワインレッドと言えばカナダ。僕はというと風邪をひいてカナダで部屋に引きこもっております。雨も降ってるし今日はどこへも行かない。やっちまった!