隔日おおはしゃぎ (Road of座)

Road of座(ロードオブザ)の代表大橋拓真が、ほぼ隔日でコラムを書くところ

♯44 私が英語を話せない理由を考察

一体何故なのか。カナダに来てまでそんなことをちまちまと考えている自分は情けないが考察してみました。その結果がこれ!


①単語を知らない

分かりやすい理由だよね。結核って言うときに「tuberculosis」を知らなかったら当然だけど一言で結核を伝えることは出来ない。話す前に単語が分からないから話し始められない。だから話せない。


って自分で言っておいて申し訳ないんだけど、共感されやすいからとりあえず一番に持ってきてみただけで、実はこれは違うんじゃなかろうか。というのは、案外どんな言葉も言い換えと例示で伝えることが出来るから。例えば上の例の結核をとっても

・肺の病気
・ガンじゃない
・口から血を吐く
・昔流行ったけど今は特効薬がある

というような情報を伝えることが出来れば案外向こうは察してくれる。言ってみれば単語を知らないというのは、あくまで伝わりにくいというだけの問題であって、英語を話せない理由ではないのではないか。というのが今の僕の見解です。つまり、確かに僕はそんなに単語を知らないけれど。知らないけれど英語を話せないのはそれが原因ではないということになる。ならばそれは一体何なのか。次に思い当たったのがこれです。


②話すことがない

これは大マジメに重要なファクターとして挙げねばなるまい。話すことって案外無いのだ。いや違うな。正確には、話すほどのことがない、かもしれない。いやもっと言ってしまって「話すほどのことじゃないと考えてしまう思考回路」かな。これはどういうことかというと、日常普通に日本語で話していると、つい感じてしまう一言がある。

「で?」

これである。「それを今ここで自分に言った意味は?」「オチは?」「それだけ?」など、万感のこもった一文字。幼稚園児や小学生レベルの英語力では、この「で?」を恐れると何も話すことができなくなってしまうのだ。「今日はすごい雨だけど別に言ってどうということもないしな~」なんてことを考えていたらもう何も話すことがない。何も話すことがなければ何も話さないし、何も話さなければいつまでたっても話せるようにはならない。こうなのである。これは何なんだって、たぶん『自分の話は面白くてこそ価値がある』っていう考えの傲慢な人間にこそ棲み付く病魔なんだよ。『面白くなくても、相手に何ら分かりやすいものをギブ出来なくても、俺の話を聞け!』雑に言うとそんな考え方が英語を話せるようにするのでは、なんて風に思う。なかなか難しいよね。

色んな国の人たちで授業受けてると、西洋や南米の人たちが次々と意見を言う。論争する。意味のあること意味のないジョークをひっきりなしに喋り続ける。で、日本人が何をしてるかっていうと、先生に当てられるのを待っている。どれだけその問題が分かっていても、言いたいって思っても、先生に当てられるのを待っている。なぜなら日本ではそれがスマートな態度だったから。なのに外国でそんな風にやると、やった途端から『自力では何一つチャンスをモノに出来ない残念なやつ』になってしまっているのだ。何が悪いとかじゃなくて文化が違うな。

そして次の理由がこれ。


③相手の喋っていることが聞き取れていない

『リスニングは受験の時にやったからある程度いけるんだよね~』ある程度の大学に行く学生の合言葉である。で、やっぱり僕もそんな風に見栄をはっていたんだけど、正直けっこう聞き取れない。質問されているのかどうかさえ分からないこともしばしば。何を聞かれているのか分からなければ『とりあえず勘違いしてるかもしれないが何か答える』が苦手である限り何も答えることが出来なくなる。そのうち「もういいよ、ありがとう」の言葉が飛んできて僕のターンは終了する。


日本人は読み書きが他の国の人より出来るのだという。これは僕もそうで、実際文法の授業で扱われることは全て大学受験の時にやったので知っている。ということは話せない原因というのはそのようなものではない。きっと、僕が英語を話せない原因はつまるところ

『何について話すべきかが分からない』

という状況に陥っていることなのではないだろうか。実際、何について話すべきかが分かったときは、背中に翼が生えたように身軽に言葉が出てくることはあったりする。


日本には対話する文化がない、とは平田オリザが確かどこかで言っていた。対話する文化は西洋のもので、日本にはない。なのに日本の演劇は西洋式に構成されている。だから日本の演劇は云々、と。せっかくスペインとかトルコとかブラジルとかシリアとかから来た人がいるのだから技術だけではなく、文化背景への深い理解と共に英語を上達していきたい。

しかし英語は上達しないのに日本語が下手になっているとはこれ如何に。