隔日おおはしゃぎ (Road of座)

Road of座(ロードオブザ)の代表大橋拓真が、ほぼ隔日でコラムを書くところ

こいバナはるき♯2 深夜に走るバナ

深夜に走る。別に走りたいわけじゃないけど、でもどうした訳か走らなきゃいけないって思う瞬間がある。しかも深夜に。部屋着のまま運動靴を履いてお気に入りの曲を片手に部屋を出る。階段を下りているとき、まるで深海に潜っていくような感覚になる。夜だと少し肌寒くも感じる。2,3回アキレス腱を伸ばして走り始める。

 ランニングコースを特に決めてるわけでもないが何となく大学の方に行く。通り過ぎる飯屋とか遠くに見えるコンビニとか、あーそういえばここにも来てたなーとか最近は行かなくなったなー、なんてぼーっと考えながら走る。大学構内にはいってからもそうだ。ここはあの時に集まった場所で、あの日の帰り道で、なんて気付いたら考えてる。

 大学に入って人通りも無くなる。そこら辺まで来てやっとなんで走らなきゃいけなかった気づく。どうしようもなくなってたんだ、心が。たぶん人に話しても伝わりにくい話だと思うけど、心がもうどうしようもなくなる事があるんだ。それは別に何が原因ってわけじゃなくて、2限に遅刻したことだったり、面白い映画を見たり、今月も金欠だなって思ったり、あの娘が可愛かったり、昔の自分を思い出したり、そういう一個一個はどうってことは無いんだけどそういうのが積み重なると、どうしようもなくなるんだ。

 そんなこと考えてると札幌駅の方まで来ている。行きと同じ道で帰るのもつまらないなって思い、大学横の道に出る。深夜でもまだ歩いてる人がいてどんどん追い抜いていく。あぁ、もしあの日あの場所で告白とかしていたら、いま追い抜かしたカップルは自分とあの娘だったのかな、もし、もうちょっとだけ正直だったら、もしもっと面白い人間だったら、もっと身長が高くてカッコよくてオシャレで優しくてお金持ちで頭が良かったら、そんな理想的な人なら今こうして深夜に走ってることなんてないのかな。

 遠くに信号が見える。自分の家までの最後の信号だ。ふと思う。あの信号が変わるまでに走り抜けられたら、何か変わるかも。そんなことでなんも変わらないことぐらい分かってるけど、疲れてきた体と頭ではそんな気がしてくる。スピードを上げる。息が苦しい。お腹が痛くなる。それでも速く。さっきまでごちゃごちゃ考えてたことが全部後ろに置いていく。体は限界で、頭は空っぽで。信号の点滅が見える。ああ間に合わないかもしれない、でも間に合うかもしれない。だからもっと速く。足を止めればもう苦しまなくていいのに、何も変わらないって決めつければ走る必要もないのに。それでも全力疾走を辞められない、諦めきれない。むしろこの時間が永遠に続けばいいのに。いつまでも信号が点滅し続けて、いつまでも家に辿り着かないでいれたらいいのに。

なんていうこいバナはるきでした。