隔日おおはしゃぎ (Road of座)

Road of座(ロードオブザ)の代表大橋拓真が、ほぼ隔日でコラムを書くところ

♯14 拝啓 旅先より

東京、大阪に人が集まり続ける日々ですがお元気でしょうか。あなたがこのブログを読んでいる頃、おそらく僕は山形県金山町にいるでしょう。金山町はとても良いところです。自然が多いし空気も美味しい。ふと見ると小川は澄みきっているし、空の入道雲を写し出す水溜まりは僕にとって夏のイメージそのものを感じさせてくれます。

僕が、あなたの反対を押しきって果てしなき地平線に走り出してもうすぐ四ヶ月です。あれから季節はもう二回も変わってしまいました。風が身体中の関節を凍りつかせる頃から、真上に登った太陽が地面に反射して、上から下から熱風を吹き付けてくるこの頃まで。私はその中で必死にアクセルを回してきました。ハンドルにしがみつき、体を前屈みにして、全ての成りゆきに耐えながらここまで走ってきました。日本は地図で見るよりよっぽど広かった。居眠りしながら私はこんな雄大な大地の上空を何の感慨もなく飛び去っていたのかと思うと何か非常にもったいないことをしていた気がします。

あなたはお元気ですか?あれからあなたとは何も語り合えていません。膝を寄せあってお互いの夢を無責任に語り合ったあの夜からすればなんと考えられないことでしょうか。私が頑張ろうとすればあなたも頑張ろうとするだろうし、私が何か意味のあることを成し遂げようとすればあなたもやはり何か意味のあることを成し遂げようとしていたことでしょう。私たちの間にお土産はきっと不要でしょうね。言葉があるから。

しかし残念なことに私は私の見るものを全く見ることのできない日々が続いています。意味不明でしょうがそう表現する以外説明がつかないのです。こんなにも世界は私に鮮やかな色彩を示してくれているのに、私の目には何故かそれが見えていないのです。街を飛ぶカラスの目は色彩を区別出来ていないとどこかで聞きましたが、私の目はモノクロにさえ映らないのです。まるで大きな岩が古代の洞穴を陽の届かぬよう塞いでしまったように。

なので、私が見聞のことを話すときどこか他人事のように聞こえてしまってもそれはどうぞ許してください。私は何も見てはいなかったのだから。私にあったのは、そう、嗅覚ぐらいなものなのだから。でも私が何かについて話そうとしたら、その時はどうか耳を傾けてください。そして、私の目の代わりにあなたの目で見たものを私に伝えてください。私にはどうもそれが最も自分の目で見ることに思えて仕方がありません。

きっと、私がこの駄文をしたためているここの時も世界は有意義なことで溢れかえっているのでしょうが、それでも人が人に言葉を投げる営みの尊さを信じています。

それではまた、緑が更なる蒼さを湛える時に北の街でお目にかかりましょう。


敬具


追伸
写真を1枚同封しておきます。トトロの木と呼ばれています。可愛らしいですね。