隔日おおはしゃぎ (Road of座)

Road of座(ロードオブザ)の代表大橋拓真が、ほぼ隔日でコラムを書くところ

♯10 思考は現実化するのかについての一つの実験

死力を尽くして人事を尽くして終幕した第二回公演を経て皆俺らの事無視できなくなるんだな。でもやっぱり無視するんだな。
でも俺らはそれに少しも構わない。やがて第三回公演、第四回と続いていって、めんどくさい順序を小バカにしながら俺は一足飛びにスターダムを駆け登る。身の程を考えてなにもできなかった奴にはこう言ってやろう。
「あら謙虚だねえ」。

手始めはまずローカルのCMだろうか。皆俺の事が気になり出す。徐々に俺を突き放した奴らはその逃した魚の大きさに気づき出す。俺はそれをほくそ笑み、でも何も感じてないように振る舞うんだ。「あの時はそりゃ誰でもそうしたよ。」なんてリップサービスまでつけて。

やがて俺は全国配給の映画に出演する。皆俺が遠いところに行った(行くべきだった)人間だと悟り出す。お茶の間に欠かせない存在になる。街を歩いていると皆声をかけて写真を撮る。誰も俺を誤解しなくなる。これまで俺の人生に関わった人間は嬉々として、俺とどれだけ親密な関係だったかを喧伝する。俺をみくびっていた人間も会話のネタでついそうしてしまう。終わってから少し空しくなる。突然旧友からの連絡が多くなる。全部に親切な返答をする。

そして毎月膨大な金を稼ぐ。食べたいものを食べたいときに食べて、行きたい場所に行きたいときに行く。気に入らない奴には五、六千円の酒をおごって申し訳なさそうな顔をさせる。自分の底の浅さに気づかせもせずに。俺を好きだった人はもっと好きになる。俺を嫌いだった奴も俺を認めざるを得なくなる。但し、別にそいつらに好きになってもらう必要はないんだな。だってそっちの方がそいつらの惨めさが際立つだろう?

そうしていつか、舞台をやる。やりたい芝居をやりたいようにやる。俺が一緒にやりたい奴とやる。チケットなんか1円でばらまいてやる。コンカリーニョが1日3ステ10日間満員御礼になる。拍手がなりやまない。カーテンコールの皆はとてもいい顔をしている。真ん中にいるのは俺だ。俺は小学生に戻る。俺は授業参観で発表がうまくいったときの俺の顔に戻る。


俺は人より芝居を見るようになる。人より本を読むようになる。人より映画を見るようになる。人より漫画を読むようになる。人より歌を歌うようになる。人より踊りを踊るようになる。人よりういろう売りを売るようになる。人より深くなる。

そして、意味深なことを言うだけ言ってその実薄っぺらいやつとそうでない奴を見分けられるようになる。そいつらと毎日論争しよう。時に負ける。その数だけ新しいことを知っていこう。自分に足りないピースを一つずつ探していこう。


そんなことを考えながら夜空を見てたら天の川が氾濫して溢れてきたんだ。不思議だね。