隔日おおはしゃぎ (Road of座)

Road of座(ロードオブザ)の代表大橋拓真が、ほぼ隔日でコラムを書くところ

かたはらいたし♯1

ブログを書けと言われた。パワハラである。テスト直前なのに。明日朝からニンテンドースイッチの抽選があるのに。伊勢川さんはプレッシャーのかけ方がうまい、と最近感じ始めた。サボり癖がある僕に絶妙なタイミングで、しかし直接そうとは言わずに「お前今やることやってないんちゃうんか? ほっといたらほとぼりも冷めるやろと思ってるんやったら、甘いぞ」という旨を伝えてくる。なんて嫌な子!綺麗な顔してどこでそんな術を身に着けたのかしらん。まぁ、ささっと書き終えてスプラトゥーン2の実況動画を見よう。金曜日のブログに前回公演の動画がアップされていたがあれを80分もかけて見るよりMOTTYのスプラ2実況動画(https://www.youtube.com/user/MOTTYGAMES)を見て各ブキの使い方、立ち振る舞い方を学ぶべきだ。

 大橋さんと違って僕は世の中に強く訴えかけたいことなんてない。だいたい「きたはらのかたはらいたし」ってなんだよ、すげー物申しそうじゃん。何にもない、明日ビックカメラでやるニンテンドースイッチスプラトゥーン2同梱版の抽選会で当選すること、望みといえばそれくらいである。なんであんな倍率高いの、しかも店員が当選番号抜き取ってるんやから当たりっこないやないか!






 
 最近「断られたらどうしよう」と考えるのをやめた。「断られたらどうしよう」と考えるのは謙虚だからではなく傲慢だからかもしれないと思ったからである。断られるのを恐れるのは、自分が断られないべき人間だと考えているからだと気がついて、恥ずかしくなった。老け顔でアゴが出ているうえヒゲまで濃いのにどんだけ自分に価値があると思っているんだろう。

 「やめた。」と言ったが、思考回路に根付いてしまった癖がそんなにすぐ止められるはずもないから相変わらず「断られるかも」と躊躇することも多い。でも今週の僕は違う。断られることを恐れず「お願い、日曜の抽選会手伝って」と言いまくっている。だって僕は特別な人間ではなくて、ニンテンドースイッチスプラトゥーン2同梱版がどうしてもほしいんだから。先輩、同期にはひたすら来てくれるようお願いし、後輩にはパワハララインを送りまくっている。何人かに「バック(見返り)は?」と真顔で聞き返されたときはちょっと傷ついた、バチが当たればいいのに。もっとはやくこうして頼んでいれば今頃スイッチは僕の手元にあっただろう。

いつか、卑屈な顔をせずに人に頼み事ができるようになりたい。スプラトゥーン2を堪能したら今度は、「公演見に来て」とお願いするので、その時の顔が卑屈じゃなかったら、見に来てください。

しかしまぁ大橋さんはよく週に三回もあんな長い文章書けるね、どれもだいたい1500字超えるぐらいだぜ。大学のレポートもそのペースで書けてれば留年しそうなのを誤魔化すために休学(北原個人の見解)することもなかったでしょうに。

♯19 みぐるみあふたーとーく

第二回公演まで一ヶ月と迫りました今日は第一回公演「みぐるみ」について一人前に「あふたーとーく」したいと思います。

↓実はひっそりと公開されていた「みぐるみ」(以下文章に満遍なくネタバレがあるので気を付けてください。ちなみにスマホからだと見れません。)
https://youtu.be/TbOwaJC8n9U


動員はちょうど50人。入場料金はカンパ制。僕と、伊勢川と、後輩の難波という三人の脚本をオムニバス形式で発表しました。本番日が3月21日であり、「3.2.1とカウントダウンの様ですね」と前説でそれに触れる度に待機していた北原君は「それやめろよ」と思っていたらしいです。

オムニバスになる事については割と早い段階で決定していたのですが、問題はそれを貫くコンセプトでした。Road of座の結成人は多かれ少なかれはぐれ者、失敗者、挫折人、ダサいを都合よく兼ね備えていたので、おそらくそういうことがテーマになってくるのだろう(ていうか僕はそうしよう)とは思っていたのですが、どうも「愛」とか「挫折」なんてのは手に負える訳もなく。結局どこから出てきたのか、コンセプトはぬいぐるみ、もっと言うと自室、ということになりました。伊勢川家には改名を繰り返した綿はみ出しまくりの巨大テディベア、大橋家には触ると痒くなる秘伝のゴリラが居たので、その辺は決まるとスッといきました。

劇団しろちゃんの冬の公演に座組全員が関わっていたので、本格始動はそれが全て一段落してからだったのですが(しろちゃんが終わるまでは絶対そっちを全力投球しようと決まっていた)、ここからがなかなか大変だった。これまでスタッフと役者と脚本演出とオペと、役場のような縦割りで組織的にしか演劇をやった経験が無い人等からすると、どうも全員で負担を補い合うということに不器用。結果、最近のRoad of座の動向がほぼ伊勢川に託されているように、その時もだいたい伊勢川が立ち回ってくれておりました(なんだかんだ本当にありがとう)。照明は付けるか消すかだったにしても、音響の音探しや小道具調達、衣装調達、稽古日程、他マネジメント諸々を演出しながらやるのはなかなかエキサイティングでした。

内容に関して今でも思い返すのは、やはり伊勢川の脚本で僕が演じた「森下」です。一貫して演出はそのパーソナリティを「底抜けた何も考えてないバカ」だと。難しいんですよね~。言外に何か考えてるような役作りは何となくでできるけど、何も考えてないってのは何となくじゃ出来ない。出来なかった。貴重な発見でした。

あと森下が考える過去の乗り越え方も、今でもふといちいち検証してしまうところです。「嫌な思い出はいい思い出もろとも無かったことにしてしまおう」「ひとつ失敗したら全部ダメ」というのが彼のポリシーでした。いやそんなアホで幼稚な方法しかとれへんかな普通。良い思い出も嫌な思い出も全部今の自分の糧なっていくねんからそれ捨ててたら前進できひんやんけ。と、ついに最後までそこに共感できないまま終わっていったのですが。芝居にしろ何にしろ、インプットしてからずっと時間が経って、ある時ふと思い出して何か納得できるってのが僕は多くて。考えてみれば、自分の力ではどうしようもなかったこと、そしてそれが思い出す度に自分を苦しめるようなこと、その過去が健全な前進を妨げているような時、反吐が出るような忌々しい部分を記憶から消すというのは、特におかしいことじゃないのかもしれません。完全には消えないのだろうけど。「あの時は俺どうかしてた」とか「無知だった」とかそういうのも言ってみれば自分になかったことにしようとする作用から生まれる言葉ですよね。完璧人間ならいざ知らず、普通に生きるなら少なからずそういう風に乗り越えるほかどうしようもないことってあるよなあと、「まあいいや~」では済まないことあるよなあと、恥ずかしながらこの年になって体感しました。そして時間が経過して思うのは「ひとつ失敗したら全部ダメ」ってのは、僕はこれは伊勢川の主張、という範疇以上で考えることでは無いんじゃないかな、と。何ていうか、このメッセージはわがまま言って盛り込まれたって感じがしないでもないということですが。

アンケートにも賛否両論いろいろな意見を書いていただきまして、上記のようにたらたら考える反面、見た人に色んなことを感じさせられるだけの物は作れたんだと思うととてもうれしかったです。

まだまだ他にも波瀾万丈な第一回公演だったのですが、書き始めると終わらないので…。


それでは、第二回公演もよろしくお願い致します!

あ、時間決まりました。12時、15時、18時!
チケットは前売り500円、当日700円!
の予定でございます。

それではまた来週も是非御立ち寄りください!!

♯17 或るボーダーを越えたのかも知れない

空は鈍よりと曇ってゐた。嗚呼、もう直ぐ夕立が降る。全体が鼠色にまぶされて居り、所々の純白の雲にさえ何か不吉な輝きが孕まれた。空はどうやら自らを重くする水分をこれ以上堪え切れない様子で有った。しかし其れが落す液体は泪などと云う美しい物では無さそうだ。つまり、小便。

そんな天気の中、私は或る一つの隧道に入り込む運びと為った。平時から私は隧道が好きである。あの鬱蒼とした茂みの間にぽつかりと開いた穴は異界への入口に思えるし、即物的に考えても、あれは山の胎内へ闖入しているような心持を得る。また、内部に張付き固められた混凝土は外界の温度を吸い込み、嘗てその通り道を最初に切り開いた名も無き労働者達が偲ばれる。端的に言って湧く湧くするのだ。

その高潮が知らぬ間に肩を伝い、肘を伝い、掌に達する。時速が九十機炉を越える。良い感じだ。私は私を昂らせる科白を幾つか吐いて、その呟きは隧道内部と外部の明暗の圧力差に消える。直後体が黒く陰った。

その隧道は此れまでとは何か幾分異なった情趣を滲ませていた。照明灯は其なりの間隔で其なりの光度を保ってゐたが、不思議なことは気温と同じように明るささえも、内部の冷たき壁が吸い捕る様だった。地面は所々濡れ、其処から引き摺られた轍が何本も過去の自動車の動きを記録していた。遠くの方に気のせいほどの鈍光が見えるが正確な距離を測る事が出来ない。言い知れぬ孤独が外套を冷やした。世界で生きているのが自分だけであるように感じられる。内部に残響する排気の音も、まるで無機質に予め決まっていた作業がただ予定調和に行われているだけの様である。

其の辺りを認知した頃には私は随分精神が不安定に為っていた。先ず、対向する軽自動車の雷斗。一瞬の眩惑の間に世界を見失いはしないか。そして回送を示し走る巨大な場素。闇の中を走る其れは深海を彷徨う魚を彷彿させる。日中の黒塗りされた様な外装から一変、内臓が透視できる様なのだ。しかし直感に従って言えば、それは生きて居ない。

出口は未だなのだろうか。早く此の不気味な空間を脱したい。外は恐らく腹痛の様な鼠色が支配して居るで有ろうが今は其方の方がよつぽど健康的じゃないか。

気が付くと後ろの方に二つの雷斗が見えた。後続の車である。焦りは妄想の悪競るの操縦者である。
「あれは私を追い掛けて来て居るのでは無いか」
無意識にそんな脅迫的な妄想が生れた
「そしてあれに追い付かれた時私は全身からすとろうで吸われる様に精魂を抜き去られるのでないか」「そして何処に出して恥の無い模範的肉体と、残滓の精神だけが取り残されるのでは無いか」

気が付くと時速は百十機炉を示してゐた。出口の光は近付いた。が、後続とは私が紐で引っ張って居る様に距離が変わら無い。もしかするとあれはずっと私を追い駆け続ける積りなのか。危険な速度も自我の保持も、全て徒労に帰すかも知れない。諦めは不屈より早く身体を循環し精神を慣れさせる。対決より回避が賢明な局面も有る。誇大妄想に侵された
ヒロイズムで絶えぬ瞬間瞬間を生きようとする事の馬鹿馬鹿しさ。此の不気味さも、後続の脅迫も、全て私の感覚器官の産物でしか無いのだ。殊更感覚を鋭敏に生きるのは苦難への舵取りであるだろう。

気が付くと、その隧道は後方に去ってゐた。漸く思考が正常に蠢き始める。視界は俄に澄み、淀んだ不気味さに中られた頑迷さも、時速と共に急速に脳から剥離して行った。気が付くと私は自分が何に苦しめられていたのかが思い出せなくなってゐたので在った。

太股に不快な水分が付着した事に気付く。遂に雲は漏らした様である。私は、後続の車が百米取程後方で左折した事を認めつゝ、そして何事も無かったかの様に走り続けて行ったので在る。



あ、羅引印(らいんすたんぷ)ができました

https://line.me/S/sticker/1501435

♯16 納涼怖い話大会

じゃあ次は僕の番ってことでいいかな。うん。ここまでの皆の話と比べるとあんまりいいものは用意できなかったと思うんだけど、でも自信を持って話すよ。なんてったって僕の話は、友達の友達とかでも、親戚の隣人でも、T市某所とかでもなくて、僕自身が実際に体験したものなんだからね。やっぱこれからは、完成度よりも生々しさの方が肝心だと思うんだ。その分センセーショナルなオチが無いのは悪く思わないでくれ。


僕は前にピザの配達のバイトをしてたことがあるんだけど、その時のことだ。配達の人は基本的にはピザを運んでお金をもらってっていう業務しかないんだけど、その日は人員が少なくてさ。ポスティングっていう、ある範囲の家々にパンフレットをひたすら入れていくっていう業務を任されたんだ。お昼だよ。まあそんな嫌いでもなかったから早速大量のパンフレットを持って指定された区画に出掛けた。そこはあまり普段行かないような地区で、全然土地勘もないとこだったんだけど、するべきは目に留まった全ての家にパンフレットを入れることだからあまり関係がない。

そんなわけで意気揚々とポスティングし始めた。やってみたらわかるんだけど、郵便受けって結構入れづらいんだよね。横に細長い穴に、押してあける蓋がついてて、チラシを持った方の手で押して同時に入れるってのがなかなか出来ない。そういうときはチラシを持ってない方の手で蓋を押しておきながらチラシを押し込むってやらなきゃいけない。たまに蓋がやたら重いのもあったりしてそりゃもうイライラの連続さ。

で、あるアパートに差し掛かった。ところどころ外装にヒビがあって、全体の塗装もほぼ剥がれている。そして昼なのに中にはほぼ光が入っていない。階段も狭いし一階に全室まとめた郵便受けもない。すごく廃れていて、本当にここに人住んでるのかなあと思いつつ。チラシを減らさなきゃいけないから一つ一つの部屋のドアの郵便受けに入れていくことにした。
ここの郵便受けも、片手じゃ開けれないやつだった。そんなわけで一つ一つ結構な時間をかけてやる羽目になった。で、何階だったかなあ、もう忘れたんだけど。よし次の階だと思って、階段を上って早速次のチラシを入れようとした。そしたらさ。


開いたんだよ、郵便受けが。勝手に。


うわっ、って言ったかは定かではないけど驚いた。そして瞬時に色んなことが脳裏をよぎってしまった。もうそうなるとダメだ。とりあえず急いでそのポストにチラシを突っ込んで、そのアパートを出ようと思った。そしてまずはその階から降りようとした。したら今度は閉まったんだよね。郵便受けが。もうビビりまくっちゃって、駆け足でそのアパートを飛び出した。まだ残ってたんだけどね、部屋。で、急いで清潔そうで安心できるマンションに向かっていった。


まあ今思い返すと、そんなにビビんなくても良かったと思ってるよ。郵便受けがどうだったかなんてことでね。でも、なんでその住人は郵便受けを開けたんだろう。なんで、僕がピザの配達ではなくポスティングをしてるって分かったんだろう。服は同じだしその階の初めての部屋だったのに。そして、なんで、見てたんだろう。


っていうのが僕の話。派手じゃなかったかな。ごめんごめん。次はもっとパンチのある話を用意しておくよ。じゃあ蝋燭、ひとつ消すね。

♯15 花に嵐のたとえもあるさ

先日一ヶ月半住み込んだバイト先をやめた。客観的に考えて短い期間だが、ほぼ毎日何時間も労働するとなれば、やはり濃密な分長く感じられるものである。

その職場には他に三人の住み込みアルバイターがいた。メアドもラインも電話番号も交換せず正直名前も危うい四人組だった。一番若いのは僕で、他の人は25~38歳と年上だった。こんなところの人間関係で『一期一会ですね!』なんてのも若すぎる。我々はただ、共に酒を運び、部屋を掃除し、飯を食っていた。喪失感が何よりも嫌いな僕は少し寂しかったが。

そのうちの一人が僕より一日先に住み込みを終えることとなった。比較的一番仲良くしていた人であった。彼は何も捨てるものがないと自称する人で、事実持ち物は小さなリュック一つであった。彼は最後まで呑気に笑いながらこう言う。

「それではよい人生を」

特に考えず僕も応える。

「またどこかで」

そのまま彼は一日数本のバスに乗り込み呑気に笑いながら手を振った。僕としてもここで感傷的になろうとするのも変な話だと思い、呑気に手を振った。どこまでも無機質なバスの車体は容赦なくスピードを上げ、終いに右カーブの中に姿を消した。

直後、僕の中に不思議な感覚がツーンときた。これまで経験したことのない感覚に思えた。涙腺はいくぶん緩み、しかし頬は笑んでいた。普段より足が軽く、顔は自然と上を向いた。そして静かに、しかし決然と、世界が優しくこう囁くことを確かに聴いたのである。

「これが別れなんだよ」

ああ、これが別れだったのか。かつて漢詩で悲しく詠われた別れとはこうだったのか。江戸時代、都へ旅立つ者の惜別とはこうだったのか。
思い返してみるとそれは過去幾人が詠んだ別れとは比べようもなくちっぽけなものであったわけだが、僕には新鮮だ。思えば携帯電話を手にして以降、僕はそれにこのような分かりやすい「別れ」を簒奪され続けていた。姿が見えなくなったら数分後にはどこで何しているかを把握し、長く会っていなくとも誰がどこで何しているかをだいたい知ることが出来ている。喪失の恐怖を無化した仇は、僕の感情から生物にありうべき切なさの裾野を放逐してしまったのではないか。まさに幸か不幸か。
それから僕はその時の感情をよく反復しては思い出す。


花に嵐のたとえもあるさ
サヨナラだけが人生だ


井伏鱒二だったか。いや、通信機器じゃどうにもならない「別れ」は今もそこかしこだ。現に僕がこと一大事のように悩むことも全て分かりやすい形が変形した「別れ」ではないか。一ヶ月半だろうが100年だろうが人生は全て「別れ」なのではないか。それは悲しみより清々しさなのではないか。だから僕の頬はあの時笑んでいたのではないか。いっそスマホの連絡先を全て消していいのではないか。消してしまっていいのではないか。いっそ消そう。よし消そう。







もちろんしなかった。第二回公演を誘えないからね。

♯14 拝啓 旅先より

東京、大阪に人が集まり続ける日々ですがお元気でしょうか。あなたがこのブログを読んでいる頃、おそらく僕は山形県金山町にいるでしょう。金山町はとても良いところです。自然が多いし空気も美味しい。ふと見ると小川は澄みきっているし、空の入道雲を写し出す水溜まりは僕にとって夏のイメージそのものを感じさせてくれます。

僕が、あなたの反対を押しきって果てしなき地平線に走り出してもうすぐ四ヶ月です。あれから季節はもう二回も変わってしまいました。風が身体中の関節を凍りつかせる頃から、真上に登った太陽が地面に反射して、上から下から熱風を吹き付けてくるこの頃まで。私はその中で必死にアクセルを回してきました。ハンドルにしがみつき、体を前屈みにして、全ての成りゆきに耐えながらここまで走ってきました。日本は地図で見るよりよっぽど広かった。居眠りしながら私はこんな雄大な大地の上空を何の感慨もなく飛び去っていたのかと思うと何か非常にもったいないことをしていた気がします。

あなたはお元気ですか?あれからあなたとは何も語り合えていません。膝を寄せあってお互いの夢を無責任に語り合ったあの夜からすればなんと考えられないことでしょうか。私が頑張ろうとすればあなたも頑張ろうとするだろうし、私が何か意味のあることを成し遂げようとすればあなたもやはり何か意味のあることを成し遂げようとしていたことでしょう。私たちの間にお土産はきっと不要でしょうね。言葉があるから。

しかし残念なことに私は私の見るものを全く見ることのできない日々が続いています。意味不明でしょうがそう表現する以外説明がつかないのです。こんなにも世界は私に鮮やかな色彩を示してくれているのに、私の目には何故かそれが見えていないのです。街を飛ぶカラスの目は色彩を区別出来ていないとどこかで聞きましたが、私の目はモノクロにさえ映らないのです。まるで大きな岩が古代の洞穴を陽の届かぬよう塞いでしまったように。

なので、私が見聞のことを話すときどこか他人事のように聞こえてしまってもそれはどうぞ許してください。私は何も見てはいなかったのだから。私にあったのは、そう、嗅覚ぐらいなものなのだから。でも私が何かについて話そうとしたら、その時はどうか耳を傾けてください。そして、私の目の代わりにあなたの目で見たものを私に伝えてください。私にはどうもそれが最も自分の目で見ることに思えて仕方がありません。

きっと、私がこの駄文をしたためているここの時も世界は有意義なことで溢れかえっているのでしょうが、それでも人が人に言葉を投げる営みの尊さを信じています。

それではまた、緑が更なる蒼さを湛える時に北の街でお目にかかりましょう。


敬具


追伸
写真を1枚同封しておきます。トトロの木と呼ばれています。可愛らしいですね。

♯13 この夏リゾートバイト考えてる人へ ~夢と理想と…~

何かがしたい夏休みというのはワクワクするようで少し怖い。確実にやってくる膨大な時間、あれもしたい、これもしたい、それいいなあ~、でも、たまの休日でさえ、眠気に勝てず昼まで寝てしまう自分。希望。失望。また希望。堂々巡り。今回は書けるだけリゾートバイトについて書いてみます。僕がやったことあるのはテーマパークの従業員とホテルの従業員だけなんですが。

まず初めに僕がリゾートバイトに対して抱いていた希望は以下の通り。

・特殊な場所で楽しく働ける
・短期間で珍しい職業体験が出来る
・お金が貯められる
・休日はそのロケーションをのびのび満喫できる
・人間関係が広がる
・面白い人に出会える
・(一夏のアバンチュール)


リゾートバイト、と一口に言っても職種も場所も違うわけで十把ひとからげな議論は出来ないでしょう。ですが、ここはあえて一つ僕が最近気づいた真理を十把ひとからげに押しつける発表をしていいですか?します。


【根本真理】『労働は、しんどい。』


これを忘れると理想と現実に計り知れない溝が生まれます。労働は、しんどい。空気のおいしい山里でも、オーシャンブルーの離島でも。もちろん、楽しくないわけではありません。
じゃあどれくらいしんどいねん、っていう話になりますね。なってください。

《昨今の日本の東京一極集中は多くの問題を生み出していますが、その最大の弊害が地方の「労働者の不足」でしょう。つまり、リゾートバイトで行くような場所は基本的にどこも慢性的な人手不足に悩まされています。だからこそ、ただの労働に「リゾートバイト」などという若者が反応しそうな名前を銘打つ派遣会社が林立し成立するし、それと契約する企業がいるのです。そして、慢性的な人手不足から派遣人材を求めることは企業にとってただの対症療法に過ぎないため、それでも人手不足はあまり解消されず、結果として派遣人材の労働は普通のバイトより多分しんどいです。》

僕の行ったところは「9時間拘束の8時間労働」だとのたまい、その実途中休憩は20~30分といった感じでした。人手不足ですね。余談ですが、そこの職場の悪循環について少し触れておきます。

人手不足→一人一人が重労働→どうしてもサービスのクオリティが下がる→経営者怒る→人望失う→より地元で働き手が見つからなくなる→人手不足

その循環に投入された我々はどうしても生々しい現実とすさんだものをいくつも見ることとなりました。まずかったのは派遣の時給が直接雇用の人より300円ほど高かったことです。地元のパートと派遣に少し亀裂が入りました。〈ただでさえ地元に働き手がいないのに、経営者が人望を失ったばかりにより地元の人が寄り付かなくなり、高い時給を設定して派遣人材を寄せ集めるしかなくなってしまったのです。〉

でも個人的には基本的に【直接雇用賃金>派遣雇用賃金】だと思っています。手数料とか取られるからね。もし、リゾートバイト斡旋会社で気に入った職場を見つけたら、そこで契約する前に直接雇用ならどうなるのかを調べた方がいいでしょう。想像以上に違います大抵。(時給は計算を間違えないようにしましょう。例題:派遣雇用「時給980円昼と夜それぞれ300円分の食券つき!」と直接雇用「時給1100円昼と夜食券は別途購入」8時間働いたときどちらが手取りが多いでしょう)



あ~~~~あ、面白くない話が続きました。
ここからは一問一答でいきたいと思います。

Q珍しい体験ができる?
Aそれはできます。バイトによって様々です。

Qお金は貯められる?
A寮費・食費は基本かからないので貯まる可能性は高いです。基本的に月20~25万くらいの稼ぎはそのまま入ってきます。ですが、知らない人もいるかと思いますが、使えば減ります。

Q休日はその土地ならではのことが出来る?
A一人でやろうと思えばいくらでも。(でもそういうのって誰かとやらないと楽しくなくないですか。人見知り、つらい。)

Q人間関係が広がる?
Aこれは一概には言えないところだと思います。ただ、もし人間関係を広げることを目的にするなら派遣スタッフがたくさんいるところを選んだ方がよい。地元の人と仲良くなるよりスタッフ同士で仲良くなることの方が圧倒的に多い。何を重視するかによりますね。

Q(一夏のアバンチュール?)
A(あいつとあいつがいい感じらしいっていう噂を途中辺りで聞いて、最終日に、女の子側は全然そんなつもりなかったらしいっていう噂を聞くという体験をしたことがあります。あ、僕はそういうのありませんでした。)ていうか、毎日疲れててそれどころじゃねえ!


料理長がパートのおばちゃんをいじめまくってるところも見たし、派遣スタッフに意地悪する社員も見たし、いろいろ大変ですね。
書くスペース的にリゾートバイトに何やらネガティブな記事になってしまいましたが、それでも、僕は楽しかった体験も苦しかった体験も全てよい経験ではあったなと思うし、現にそれなりに稼ぎにはなるので、素晴らしいと思いますリゾートバイト。この夏は是非夢と希望と、やっぱり希望!を胸に、新天地へ出掛けてみてはいかがでしょうか!?